子ども虐待の定義については、研究者や実務家の間で様々な意見があり、まだ十分な
コンセンサスが得られているとは言いがたいが、一応親または親に代わる保護者等に
よる下記のような行為は虐待と言えよう。「保護者等」には保護者以外に年長の同居
親族等が含まれる。

 ここで留意すべきは、虐待であるかどうかは親の意図とは関わりなく、あくまで子
どもの視点、子ども自身が苦痛を感じているかどうかといった観点から判断されるべ
きであるということである。小林美智子は次のように述べている。

 「虐待の定義はあくまで子ども側からの定義であり、親の意図とは無関係です。そ
の子が嫌いだから、憎いから、意図的にするから、虐待と言うのではありません。親
はいくら一生懸命であっても、その子をかわいいと思っていても、子ども側にとって
有害な行為であれば虐待なのです。我々がその行為を親の意図で判断するのではなく、
子どもにとって有害かどうかで判断するように視点を変えなければなりません。」
                            (小林美智子,1994)

 なお、虐待は次のような4つのタイプに分けるのが一般的である。
 
1.身体的膚待(physical abuse) 生命・健康に危険のある身体的な暴行

 ●外傷としては打撲傷、あざ(内出血)、骨折、頭部外傷、刺傷、たばこによる火
   傷など。
 ●生命に危険のある暴行とは首を絞める、殴る、蹴る、投げ落とす、熱湯をかける、
  布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、異物をのませる、食事を与えな
  い、冬戸外にしめだす、一室に拘束するなど。

2.性的虐待(sexual abuse) 性交、性的暴行、性的行為の強要

 ●子どもへの性交、性的暴行、性的行為の強要・教唆など。
 ●性器や性交を見せる。
 ●ポルノグラフイーの被写体などに子どもを強要する。

3.心理的虐待(psychological abuse) 暴言や差別など心理的外傷を与える行為

 ●ことばによる脅かし、脅迫など。
 ●子どもを無視したり、拒否的な態度を示すことなど。
 ●子どもの心を傷つけることを繰り返し言う。
 ●子どもの自尊心を傷つけるような言動など。
 ●他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする。

4.ネグレクト(neglect) 保護の怠慢や拒否により健康状態や安全を損なう行為

 ●子どもの健康・安全への配慮を怠っているなど。
  例えば、1>家に閉じこめる(学校等に登校させない)、2>重大な病気になっ
  ても病院に連れて行かない、3>乳幼児を家に残したまま度々外出する、4>乳
  幼児を車の中に放置するなど。
 ●子どもにとって必要な情緒的欲求に応えていない(愛情遮断など)。
 ●食事、衣服、住居などが極端に不適切で、健康状態を損なうほどの無関心・怠慢
  など。
  
 例えば、1>適切な食事を与えない、2>下着など長期間ひどく不潔なままにする、
 3>極端に不潔な環境の中で生活をさせるなど。
 
 ●親がパチンコに熱中している間、乳幼児を自動車の中に放置し、熱中症で子ども
  が死亡したり、誘拐されたり、乳幼児だけを家に残して火災で子どもが焼死したり
  する事件も、ネグレクトという虐待の結果であることに留意すべきである。
 


「子ども虐待対応の手引き」監修 厚生省児童家庭局 発行 財団法人 日本児童福祉協会
20ページから22ページ引用